こんにちは.このブログを始めて読む方へ.
宇宙飛行士を目指す大学生「林大地」@daichidaiji といいます.
このブログでは大学編入を大きく取り扱っていますが,「編入体験記」という一種の通過儀礼をやっていなかったのでこの機会に書いています.
2018年度に東北大学に編入学しました.
併願校として筑波大学 理工学群 工学システム学類 に出願し,こちらも合格しています.
自己紹介
電気・電子系の高専→東北大学 機械系 に編入しました.
出身高専は鳥取にある「米子高専」.そこの電子制御工学科という学科に所属していました.
電子制御といっても一言で表すと「浅〜〜〜く,ちょびっと広く」といったイメージの学科で,
- 電気・電子 5割
- 機械系 3割
- 情報 2割
の分野が混ざったようなカリキュラムをしていました.そのため,編入時には電気系にいくか,機械系に行くかでとことん迷いました.
選択肢は広かったのでその点はよかったです.
高専の成績
偏差値は底辺の高専だったので,勉強を頑張れば上位に行ける環境でした.
陸上部だったのですが,意識高い友達がいて彼に触発されて1年時から試験勉強を頑張りました.彼がいなかったらまた違った人生があったのかもしれません.(ありがとう)
成績というか順位ですが,
1年 : 2位
2年 : 1位
3年 : 1位
4年 : 1→2位
5年 : 1→3位
でした.4年は2位の子と接戦で最後のテストで負けました.
彼とは家に招いて一緒に勉強していましたし,底辺高専の割には刺激をもらえたいい環境だったと思います.
高専の試験勉強はテストのための勉強になっていたと自覚しています.成績は良かったですが,学問のあるべき姿では無かったな,と後悔しています.
卒業研究はロボットハンドの把持制御を行っていました.Raspberry Pi によるマイコン制御です.
部活
陸上部で長距離を1年から3年の秋までやっていました.
タイムは悪かったですが,自主練もテスト期間にやってましたし,真面目に部活に取り組んだとは思います.
ただ,編入試験の時に役立ったかと言うとそうでもない気がします.面接で一応触れましたが,面接官から好感触だったということもなく普通でした.
3年でやめたのは CANSAT という空き缶サイズの人工衛星を作るコンテストに参加したためです.
1人でやったのですが,思いの外ハマり,集中したくなって辞めることにしました.

作った CANSAT
さらに3年の秋からは高専英語プレゼンテーションコンテストに参加して,スピーチの部で優勝したりしました.
この CANSAT とスピーチコンテストは面接のときにも活きたし,人生に厚みが出た気がします.
受賞経験・資格
僕のスペックの指標になるかと思うので赤裸々に思いつく限り列挙します.
- 工業英検4級 : 高専1年 6月
- 英検2級 : 高専2年 夏
- CANSAT甲子園 技術賞 : 高専3年 夏
- CANSAT甲子園 審査員長特別賞 : 高専3年 夏
- 高専スペースキャンプ CANSATの部 : 技術賞
- 高専英語プレゼンテーションコンテスト スピーチの部 地区大会優勝 : 高専3年 秋
- TOEIC IP 650 : 高専3年 2月
- TOEIC IP 745 : 高専4年 5月
- TOEIC 775 : 高専4年 6月
- TOEIC 745 : 高専4年 9月
- TOEIC 840 : 高専5年 5月
- 電気情報関連学会中国支部 特別優秀賞 : 高専卒業時
最後の仰々しいのは各学科1人表彰されるやつで,学業優秀賞的なやつ.大した賞ではありません.
こうして振り返ると英語をそれなりに頑張ってきた気がします.
TOEIC は840で出願しました.
現在
東北大学 工学部 機械知能・航空工学科 航空宇宙コース 4年次に在籍しています.
研究室は宇宙系で,シミュレーションの研究室です.数少ない推進をやっている研究室で,僕は人工流れ星のシミュレーションをやっています.
ロマンはたっぷりですが,考える物理現象が難しくて苦戦中です.
学会は日本航空宇宙学会の学生会員で,11月に徳島の学会に参加予定です(結果出さなきゃ).
卒業後は同じ研究室で博士号取得に向け研究を頑張る予定です.
(追記: 大卒で iOS アプリ開発者として就職しました。)
僕が編入して大変だったことなどは以下の記事にまとめているのでよろしければ後で読んでください.
https://daichidaiji.com/after-1-year-from-transfer/
志望理由
理由は大きく3つあって,
- 航空宇宙が学べる
- 旧帝大
- 研究第一主義
最大の理由は「航空宇宙が学べる」から.
僕は小学校から宇宙飛行士になるのが夢で,課程としてエンジニアを目指しています.「宇宙で動くロボットが作れたらいいな」と思い立って機械系の学科に進学を決意しました.
吉田教授という先生が有名でHAKUTOをはじめとして世界的に有名な宇宙ロボットの研究室があり,そこを目指していました.
旧帝大というのも理由です.宇宙飛行士になるためには学歴はまだまだ必要と考えていて,とりあえず旧帝大クラスに行きたいと思っていました.
また,東北大学工学部は「研究第一主義」というポリシーがあり,研究費的にも国内屈指の規模です.研究をとことんできると思ったのが3番目の理由です.
勉強したこと
受験勉強スケジュールの詳細は僕が以前書いた記事を見てほしいですが,軽くまとめておきます.
https://daichidaiji.com/tohoku-hennyu-study-schedule/
全体的に過去問ベースで勉強しました.過去問の手に入れ方は僕が以前記事にまとめています.
https://daichidaiji.com/hennyuu-kakomon-how-to-get/
ここでは本当に役立った参考書だけをかいつまんで紹介します.
数学対策
徹底研究
基礎固めに.といいつつも章末問題には結構苦戦した.
1周.
過去問特訓
良書.難しい問題を解説してくれるので本番での思考力が鍛えられた.
1ヶ月前くらいに始めて,問題を選んで1周.
この他に使った参考書やおすすめ参考書の記事も書いているので詳しくはそちらをどうぞ.
https://daichidaiji.com/hen-nyu-textbook-math/
物理対策
物理はほとんど色んな大学の過去問を解いて勉強しました.
物理のエッセンス
東北大学は高校物理程度の熱力学・波動が出題されるのでその対策に.
熱力学・波動の部分だけ2周.
この他に使った参考書やおすすめ参考書の記事も書いているので詳しくはそちらをどうぞ.
https://daichidaiji.com/hen-nyu-textbook-phy/
化学対策
化学は付け焼き刃でした.
橋爪シリーズ
よくまとまっていますが,高専の化学しかやってない僕の最初の最初の問題集としては少し難しかったかなと.
ですが,基礎がわかっていれば短期間で終えることができるのでおすすめします.
化学の新研究
辞書的な役割で持ってましたが3回くらいしか開かなかった気がします.ちゃんと勉強したかったら持っとくといいかもしれません.
面接対策
面接練習は高専の研究室の先生に2回ほどやってもらいました.
正直ちゃんと練ってなかったので,筆記試験が終わったあとにホテルで考えた部分が多いです.(編入生あるあるということを編入後に知った)
試験の雰囲気
前々日の夜に仙台に到着.定禅寺通りにあるスーパーホテルに大浴場があるからという理由で宿泊しました.次の日に会場の下見をしました.
試験前日の夜ご飯は伊達の牛タンでした.美味しかったです.

伊達の牛たん
1日目 : 筆記試験
たしかスーツで行きました.僕はスーツ着るの好きなので着ましたが,けっこう私服もいました.
大講義室のような講義室で受けました.志望学科ごとにエリアが分かれてて,機械知能・航空工学科と電気情報・物理工学科がダントツで多かったです.
スマホは封筒に入れて回収.
お昼はウイダーゼリーだけにして眠くならないようにしました.
正直あんま緊張もしてなかったし,結構解けたので覚えてないです.
2日目 : 面接
遅刻しかけて焦って猛ダッシュ.汗だくでした.
みんなスーツでした.
1日目は一斉に受けましたが面接は各学科の建物に分かれて講義室で待たされました.
面接は家が遠い順番・アクセスが悪い順番に実施され,たしか九州から来た人が1番でした.
僕は鳥取だったので3番目とかでした.
ちなみに東京高専の友達は受験番号1番なのに最後の方だったので「キレそうだった」と語っています.関東から来る人はアクセス良好なので最後の方になります.覚悟してください.
試験内容
数学試験 (9:00-10:30)
問題用紙が3枚,解答用紙が3枚(表裏使えて A3 か B4 の大きい紙)
草案用紙(計算用紙)が4枚配布されました.
オイラーの公式から加法定理を証明
$$ \cos(\alpha + \beta) = \cos\alpha\cos\beta - \sin\alpha\sin\beta $$
$ f(x) = e^{2x}(\cos x^2 - \sin x^2) $ について
- $ f(x) = 0 $ になる実数 $x$
- …
…ってちゃんと書こうと思ったけど,過去問は請求すればいいし,記憶があやふやなのでここに書くことはやめときます.
媒介変数の問題
行列から固有値・固有ベクトルを求めて対角化
概ねできましたが,1問わかりませんでした.振り返るととても簡単な問題でしたが,思いつきませんでした.
試験後の周りの反応的に媒介変数の問題ができなかった人が多かったようです.
手応え : 7〜8割
物理試験
- 自由落下の問題
空気抵抗まで考えるやつです. - パチンコのように球をゴムで引っ張って飛ばす問題
面白い問題でした - コンデンサの問題.
コンデンサに金属や誘電体を入れたり出したりして電源がした仕事や静電エネルギーを求める問題.
結構難しかったのかもしれませんが,電気系出身だったので完答できました. - 波動
昨年も波動だったので自分の年は熱力かと思ってました.対策してよかった.
屈折率が異なる3つの薄膜をくっつけた問題でした.
全体的にひねった問題が多かった気がします.
手応え : 7割程度
化学試験
- ギブスエネルギーの平衡定数を求める問題
誘導がなされていたので化学を知らない僕でも解けました. - アルカリ金属の問題とアミノ酸の語句問題
- $ \mathrm{C_4H_8} $ についての問題
問題の文章を細かく見てると「ほぼ答えじゃん!」ってのが多かったです.ラッキー
誘導がめちゃめちゃ丁寧だったのでなんとか乗り切りました.
今までで一番カンタンだったかもしれません.難化に気をつけて.
手応え : 5割
面接試験
詳しくはこちらをどうぞ.
https://daichidaiji.com/tohoku-interview-transfer/
筆記試験がわりとできたのでリラックスできました.
試験の結果
成績開示した結果を載せます.
- 筆記試験 323/400 (80.8 %)
- 面接 260/300 (86.7 %)
- 総合点 583/700 (83.3 %)
意外に点数良くてビビりました.
合格した僕からのアドバイス
TOEICについて
僕の出願時のTOEICスコアは 840 でした.
自分で言うのは気持ち悪いですが,高いほうだと思います.
皆さんが気になるのは「実際どれくらいあれば戦えるのか」だと思います.
結論からいうと600あれば十分です.
なぜかというと,僕の代の主席合格者が500点代だからです.
顕著に効いてくるのは数学・物理・化学・面接です.
もし英語が効いてくるのであれば僕の面接点は満点近いでしょう.
しかし8割程度なのでやはりTOEICは600あれば戦えるし,700あれば十分といえます.
僕は5月までTOEICをやっていて,残りの3ヶ月で数学・物理・化学を詰め込みましたが,おすすめできません.みなさんは4年生のうちにTOEICは終わらせて,その他に力を入れてください.
おわりに : 編入を目指すあなたへ
なかなか超大作な体験記になったのではないでしょうか.
別の記事に書いてるのは省略したのでそれらも含めると1万字を優に超えます.
僕が受験生だった頃は結構体験記を読んでモチベーションを上げてたので皆さんのモチベーションがこの体験記で上がればいいなという思いで書きました.
高専から東北大学に入学する前は,正直,高専生は無双できると思っていました.
しかし,予想とは裏腹に内部生はありえないほど優秀ですし,吸収力が半端ではないです.特に僕が在籍している航空宇宙コースはその傾向が強い気がします.
じゃあ高専生の強みは何なのでしょうか.僕が思うに,内部生と高専からの編入生の違いはなんとなくですが,「好奇心」な気がします.
高専生はどうやってものがつくられているのかにとても興味があるし,世の中の現象に対してもなんでだろう,と考えることができる素敵な好奇心があると編入生同士で会話していると感じます.
みなさんも例に漏れずその1人です.
もし,東北大学に編入したいということであれば,受験にパスして,この素晴らしい環境で活躍されることを楽しみにしています.
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